公差の考え方:異常を検出できる公差設定をしよう

開発

商品を開発するときに、仕様書や図面には必ず「公差」が入ります

公差には二つの意味があり

1.許容できるバラツキ

2.異常の検出

「許容できるバラツキ」に関しては多くのものづくりに携わる人たちは理解していますが「異常の検出」には理解が薄い場合があります

「異常を検出るための公差」について考えてみたいと思います

公差とは

ネットなどで「公差」を調べると「許容される誤差の範囲」「許される限界値」のような定義をされいる場合が多いようです

これは、モノの寸法の場合もありますが、製品の性能の場合もあります

すべての「測定値」に対して公差は必要です

また、設計者は商品の性能を確保するために必要な公差を決める場合もあれば、法律や規格(JISや電気用品安全法、ISOやIECなど)で決められる場合があります

設計者、開発者はこの公差を図面や仕様書にしっかり記入し製造や調達へ伝えます

製造はこの公差内に入るようにものづくりをすることになります

そうして図面通り、仕様書通りに製品を製造し、品質を確保した製品を出荷します

参考ブログです

図面通りにモノをつくる
この記事では、「品質の基本は図面通りにモノを作ることから始まる」ことについて語ります 設計者のアウトプット全て称して広義の「図面」と呼びます。ですので、2次元図面、3Dデータ、仕様書(部品、製品)も含めて図面と定義します

公差と製造との関係

設計者・開発者が公差を設定する時には製造の能力、つまり公差内のバラツキで生産できるかを考慮しなければばりません

設計者が製品の性能を確保するために公差を小さくするのはある意味簡単なのですが、モノを作る側は大変になります

最悪の場合、不良率の増加=コストアップ、市場クレームにつながります

この図は、特性値や寸法のバラツキを正規分布で表し、そのバラツキが公差内に収まっている例です

しかし、こんな場合だけでなく、下の図用ようなケースも普通にあります

公差の幅が狭く、ある程度の確率で不良が発生します

このような場合の対応として、

1.バラツキを抑える製造方法を考える

2.公差を広げても性能を確保できる方法を考える

1.は製造的対策  2.は設計的対策になります

難易度、コスト、お客様への影響を考慮して決めることになります

また、バラツキは許容範囲でも平均値が基準値がずれる場合もあります

下図のような場合ですね

この場合は、規格値をずらすか(製品の性能に影響が及ばない、もしくはお客様が受け入れることができる場合に限る)もしくは平均値を基準値に近づける設計もしくは製造条件の変更が必要です

このように、公差を決めるときは、製造の能力、製品性能への影響を考慮して決めていきます

上記のことは、多くの設計者、製造者、モノづくりにかかわる人は理解しているのではないかと思います

難しく書き関したが「CPK(工程能力)を確保して、品質を保証しましょう」ってことです

そして、公差には「許される範囲」を示す目的ともう一つの目的があります

異常を検出するための公差設定

下の図のような場合を考えてみたいと思います

バラツキが公差に対して十分小さい場合ですね

一見余裕があっていいように見えます

しかし、あるロットで下図のような場合があったとします

バラツキは変わらないけど、平均値が移動した場合です

一見公差内に特性値もしくは寸法が入っているので問題ないように見えます

しかし、この場合は明らかに何かが大きく変化しております

つまり、通常ではありません

異常が発生しています

製造条件が変わっている、部品寸法、形状が変わっている等です

ですので、決して放置するのではなく、平均値を規格値に近づけるアクションが必要です

しかし、

公差を実際のバラツキに対し必要以上に大きい場合、このように異常が発生しても見つからない場合があります

公差が実際のバラツキより必要以上に大きい場合の対応としては

1.公差を異常を検出できるレベルに設定する

2.傾向管理を行う

1.は開発段階で行う活動です

2.は量産段階でX-R管理図を用いて行います

詳細は別記事に譲るとして、簡単に言うと

「毎ロットの平均値とバラツキの傾向をグラフ化して管理し、傾向に変化がないか確認するする図」

ってことでしょうか

これを見て、「変化がないか」=「異状ないか」を常に管理することで、変化点を見逃すことを防ぎます

異常を見逃す公差設定の例

私の経験の中で、上記のような必要以上に大きい公差を設定し異常を見逃す例として

「公的な規格と実力のアンバランス」の場合が多いですね

公的な規格で許容値として「±10%」と決められている場合

たとえば出力1000W製品の場合、製品の仕様書に「1000W」と書けばこれは「900Wー1100W」に入る商品となります

これを、いちいち仕様書や取扱説明書に書かないで済むように公的規格で決められているわけです

家電製品などが分かりやすいでしょうか

掃除機のパッケージに1000Wと書かれた商品の場合、その公的規格がプラスマイナス10%ならその商品は「900W-1000W」の商品になります
(スイマセン、掃除機の公的規格は知りません。いい加減に書きました。ただ規格があることは確かです。少なくとも、同じ商品どれを買ってもぴったし1000Wというのはあり得ません)

このような製品を設計している時、未熟な設計者は、実際のバラツキが「±3%」くらいしかなくても、設計仕様として公的規格通り「±10%」の公差設定をしてしまいます

この場合のDR(デザインレビュー)の会話はこんな感じです

未熟な設計者「試作品の測定結果 995W 合格です。設計のほぼ狙い通りです(どや顔)」

私「もし、試作品の測定結果が905Wでもこれは合格か?」

未熟な設計者「合格です。規格以内に入っています」

私「通常この商品のバラツキはどの程度だ」

未熟な設計者「3%程度です」

私「狙いから10%近く差がある結果出ているのに合格か???」

未熟な設計者「合格です。公的規格内に収まってますから(さらにどや顔)」

こんな会話結構あります

通常3%のバラツキを持った製品が、設計の狙いから10%も性能が異なるのは明らかに異常です

それを、必要以上に大きいな公差設定のため、異常と認識していない事例です

ここで言いたいのは、これ

公的規格で決められた公差と設計者として狙うべき公差は異なる」

設計者は、あくまで「お客様に提供する価値、性能を守るため」「製造で低コストで製造するため」に必要な公差を設定するべきで、公的規格はその次の位置づけになることを理解しておかなければなりません

そして、お客様に供給する性能の確保に加えて、異常を見つける公差を設定しましょう

まとめ

公差についての考え方をまとめました

公差には

1.許容できるバラツキ

2.異常の検出

二つの目的があることを理解してください

こういう私も、若いころ公差の意味なんかまともに考えず図面に書いていましたけどね

そして、製造やお客様に迷惑を掛け痛い目にあいながら、少しづつ意味を理解してきたと思います

是非、若い設計者、品質保証担当の方が、そのような迷惑をかけたり、痛い目にあう経験を少しでも減らすことに役立てば嬉しいです

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