機能設計書シリーズの4回目です
設計の現場では、「図面はあるけれど、なぜこの設計になったのか説明できない」という課題が少なくありません
そんな状況を解決するのが 機能設計書 です
前回の記事でその作成要領について説明しました

「機能設計書」の書き方 〜 設計意図を正しく伝えるための実践ポイント
「機能設計書」は、設計者の頭の中にある“考えの流れ”を、第三者が見ても理解できる形で残すためのツールです。設計品質向上の要であり、製品開発の効率化にも大きく貢献します。今回は、その記入項目とポイントを整理しました。
機能設計書は、作成するだけではなく、活用してこそ真価を発揮します
今回は、日常業務での使い方から設計レビューへの活用まで、実務に直結するポイントをご紹介します
機能設計書を活用する3つの目的
- 品質保証
設計の妥当性を論理的に説明できる状態を維持する - 開発効率化
後工程や他部門との連携をスムーズにし、手戻りを防ぐ - 知識継承
設計意図や判断根拠を次世代に残し、人材育成のベースにする
開発プロセスでの活用ポイント
- 設計レビューの中核資料
議論の焦点を明確にし、会議時間を短縮 - 部門間の共通言語
製造・品質保証・購買など、関係部門との誤解や前提のズレを防ぐ - 設計変更の判断基準
顧客要求や仕様変更時に、根拠と照らして影響範囲を素早く把握 - 教育ツール
若手設計者が先輩の設計プロセスを学ぶ教材に。特に「設計根拠」の部分は、経験と理論をつなぐ重要な学習材料
実務での具体的効果
機能設計書の活用することで得られる効果としては次のようなことがあります
- 設計レビュー時間が 〇〇%短縮
- 試作段階での設計不具合が ○○%減少
- 設計変更の影響分析時間が 〇〇短縮
- 市場での品質トラブルの撲滅
機能設計書の考え方を取り入れ、このような効果の成功体験を得ることで、多くの人の悩みを解決できることを感じていただけると嬉しいです
設計レビューにおける活用方法
レビューは「承認を得る場」ではなく、「設計の妥当性を確認する場」です
そのためには、以下の項目が機能設計書に明確に整理されている必要があります
- 機能名と目標(品質要求)
- 目標設定の根拠(顧客要求・市場背景・法規制など)
- 手段(実現方法)
- 設計根拠(論理的検証)
論理的検証の方法
評価の前に、設計の妥当性を理論的に検証します。主な手法は以下のとおりです
- 設計式(力学計算・熱計算・流体解析)
- ベース実験データや文献情報
- 業界標準や規格の引用
- 従来製品の事例比較
- コンピューターシミュレーション(CAE、熱解析、流体解析など)
レビューの進め方
- 事前共有:設計書を配布し、疑問点を事前に整理
- 論点明確化:重要ポイントに絞って議論
- 根拠チェック:条件・計算式・データの妥当性を確認
- 評価計画への接続:論理的検証をもとに、評価で重点確認すべき項目を決定
成果を最大化するコツ
- 不明点を事前に洗い出し、会議時間を短縮
- 根拠が明確な部分は議論を省き、重要課題に集中
- 論理的検証でカバーできない部分は評価で重点確認
まとめ
機能設計書を活用すれば、勘や経験に頼った議論から、論理と根拠に基づく議論へシフトできます
日常業務とレビューの双方で使いこなすことで、設計品質を高め、手戻りを最小化にし、市場での品質トラブルの撲滅を実現することが私の願いです
皆さんの設計品質向上にお役に立てれば嬉しく思います



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