企業の”成長よりも収益化優先”の考え方は成り立つのか?やっぱり”付加価値生み出し成長する”これが本質

ものづくりの話

皆さん、時々「成長より収益化」って方針を出されることありませんか?

私は、海外工場の経営をしていて、時々日本から、「成長の前に収益性を高めることを優先しろ」って言われます

これを聞くたびに

「そんなこと言うとるから、なんもチャレンジせんカルチャーが生まれ、おもんない会社になっていくねん」

って思ってしまいます

収益化の方法

釈迦に説法かもしれませんが、収益化の方法は大きく3つです

偉そうに書きますが、かなり当たり前のことでスイマセン m(__)m

①販売を伸ばす

②仕入れ材料費(変動費を減らず

③費用(固定費)を減らす

少し説明します

下記図は、利益の構造を簡単に示す図です

黒線は販売額を示します

販売数が増えれば比例して販売額が増えます

赤線が固定費

販売が増えても費用としては変わらない費用(正確には少し増えますが今回は省略)

逆に言えば、販売がなくなっても必ず発生する費用

例えば人件費、設備費用、商品開発費用

青線が総費用(比例比と固定費を足した費用

比例比は販売の増加とともに増える費用

材料費、運送費等です

この販売額と総費用の差が「利益」になります

この利益を増やすには

①販売を伸ばす

②仕入れ材料費(変動費)を減らす

③費用(固定費)を減らす

ことになります。

図に書くと

先の図に比べ

・固定費を減らす=赤線を下げる、

・変動費を減らす=傾きを抑える

・販売を増やす=矢印の線を右にする

をすることによって、

利益の矢印が長くなっているのが分かると思います

それぞれの項目に関して、もう少し考察してみます

販売を伸ばす

販売を伸ばすと比例して変動費は増えますが、固定費は原則、変わりませんから利益は増えます

販売を増やす方法は大きく3つ

①販売する商品を増やす

②販売する場所を増やす

③商品単価を上げる

それぞれ見ていきましょう

①商品を増やす

極端な話、

ケーキ屋さんで

1.商品の種類だけのケーキ屋さん

2.商品の種類が20個のケーキ屋さん

どっちの販売額が大きいですか?

てな話です。

ただし、

種類が多すぎても、効果が少なくなりますし、手間がかかるので、固定費のラインが販売以上に上がっていますので要注意です

②販売する場所を増やす

同じくケーキ屋さん

1.東京だけで売る

2.全国で売る

どっちが販売増えますか

ただし

これも、販売以上に費用をかけたらだめですね

費用を減らす方法として、最近はネット販売がドンドン増えています

③商品単価を上げる

実は、これが一番私の言いたかったことでして、

先のグラフで言うと、販売高線の傾きを上げることになります

これは、単に商品単価を上げても、お客さんはだれも買ってくれません。

お客さんが値段が高くても買ってくれる価値のある機能やサービスでなければなりません

これを付加価値と言います

この付加価値を、技術開発や独自サービスの開発によって生み出すことによって利益は増えます

仕入れ材料費(変動費)を減らす

できるだけ安い材料を仕入れれば利益は増えます

当然、Q(品質)C(コスト)D(デリバリー)の要素のバランスを考えることは前提ですね

これは、理解しやすいかと思います

費用(固定費)を減らす

固定費はいろいろありますが、代表的なものが

人件費

設備償却費

商品開発費

です。

これを減らせば利益は増えます

これも、バランスが大事で、項目を見てわかっていただけると思いますが

人件費、設備投資、商品開発投資を減らすと

企業としての利益を生む出す能力」=「競争力、付加価値」を創出する能力を失う

ことにつながるので、これもバランスが重要です

”成長よりも収益化優先”の理論は成り立つのか?

以上の収益化=利益を増やすの基本的考え方について述べました

当たり前のことで、少しうんざりの人もおられるかもしれませんがご容赦

この基本を忘れている経営者がいるのでは?

と思ってあえて書きました

さて、

これらをベースに”成長よりも収益化優先”の理論が成り立つのか考えてみましょう

売り上げを増やす方法として

「商品を増やす」、「販売する場所を増やす」

がありましたが、思ったように販売が伸びない場合、これらにかかるコストが負担になり利益を圧迫するので、売れない商品や店舗、販売国から撤退することをが必要です

この場合、一見、販売が減るけど利益は増えそうに思えます

しかし、この場合条件があります

撤退する商売に使っていた費用をすべてなくすことが前提です

例えば、商品開発の人員、お店の人員、店舗や設備

これらをすべてなくさないと利益は逆に減ってしまいます

店舗や設備に投資していれば捨てる

レンタルの場合は契約解除すれば0にできます

人の場合は、解雇することになります

ここまでできれば、収益化が図れます

これは、固定費を減らすことになります

つまり

”成長よりも収益化優先”は固定費を減らすと同じ意味

です

ここで話を固定費を減らすことについて話したいと思います

固定費を減らせば、利益は確実に増えます

人を削減する、給与を減らす 投資をやめる、商品開発をやめる 販売拠点を減らす

これらをすれば、固定費は確実に減り、一時的に収益化につながります

確かに過剰人員、過剰投資、収益性の低い商品開発・店舗経営はやめて不必要な固定費を減らすことは重要です

でも、

人を削減する、給与を減らす投資をやめる、商品開発をやめる、店舗を減らす

続けた場合どうなるかをイメージしてください

従業員のモチベーションを維持するには昇給は必要です

設備も痛みますので更新が必要です

競合は新商品を出し続けますし、販売エリアを拡大していきます

固定費を減らすことは、従業員、設備、商品開発力、販売力これらの能力を抑えることになります

企業はその活動による付加価値を生み出し、その対価としてお客様に代金をいただきます

”固定費を減らす”ことはこの付加価値を生み出す能力が低下することと同じ意味

事業の環境が日々変わる今に時代において、

付加価値を生み出す能力を削減して、企業を維持できるのか

これを考えると、私は

”成長よりも収益化優先”の考え方は、成り立たない

と思えて仕方がありません

確かに、衰退する事業はどこかで撤退し、固定費を0にする必要はあります

しかしこれを繰り返すと、最後には会社はなくなります

何かを撤退すれば、それに代わる付加価値を生み出す新しい方策が必要です

それには、人や設備商品開発が必要なのです

ですから、

経営者は絶対に ”成長よりも収益化優先” という言葉を発してはいけない

”固定費によって付加価値を生み出し収益化を図る” と常に言い続けるべき

私は、そう考えています

まとめ

いま日本の国は、付加価値を生むより固定費を減らして利益を出すことを優先しているように思えてなりません

株式市場や、マスコミもこのことを重視しているように感じます

しかし、その結果、日本は他国にどんどん置いていかれています

一人当たりのGDPは現在OECD加盟国35カ国中19番目です

1995年は世界3番目であったにもかかわらずです

給与や雇用を減らすので人々も全く豊かになれません

国民の平均所得は1997年 OECD加盟国の中で3位でした

今は35カ国中25番目です

こちらの記事を参考にさせてもらいました

今や“凡庸な先進国”へ、一人当たりGDPに見る日本の立ち位置の変化
苦境が目立つ日本経済の中で、中小製造業はどのような役割を果たすのか――。「ファクト」を基に、中小製造業の生きる道を探す本連載。第3回では、国民1人当たりの豊かさを示す指標「1人当たりGDP」に焦点を当て、日本の現在地を見てきます。

この大きな後退は、根底に ”成長よりも収益化優先” の考え方があると思います

私は

日本人の知恵で、付加価値を生み出すことで、日本を成長させ、豊な暮らしを実現する

こんな国を目指したいです

皆さんはいかがでしょうか

私は量産型のものづくりをベースに記事を書きましたが、中小企業の加工メーカの立場での記事があります

いつも大変参考させていただいています

119 付加価値って何だろう? - 停滞する企業の稼ぎ | 小川製作所 東京都葛飾区 溶接・研磨・精密加工 医療・半導体・航空
「付加価値」の定義が曖昧なままの議論が散見されますが、付加価値とは「事業を通じて加えられた金銭的価値」ですね。日本企業の稼ぐ付加価値の推移について着目してみます。どの企業規模でもバブル崩壊を機に付加価値が停滞しています。中小企業が付加価値を高める経営を実践する事が、日本経済復活のキーポイントとなりそうです。

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