製造業では、「現場改善活動」って、どこの工場でも、年度の方針に入っていますね。
今私が支援している研修先の研修生の活動テーマも「生産性向上に向けた現場改善」とか……非常に多いです。
生産性を上げる、不良を減らす、リードタイムを短くする、在庫を減らす……。
そのために、「改善活動するぞ~~」と幹部から号令や方針が出て、担当が指名され、改善を推進しようとする会社も多いと思います。
もちろん、それは大切なことです。全く否定しません。
私自身も、これまでの仕事の中で、たくさんの改善活動に関わってきたなかで考えることがあります。
「担当者として改善」するのではなく、「組織として改善」することで、成果の継続性を得ることができるのではないか。
今回は、そんな話です。
1.「あの人がいるから、改善が進む」という状態になっていないか
これは改善活動に限った話ではありません。
会社には、
「この仕事は○○さんしか分からない」
「○○さんがいないと、うまく回らない」
という仕事が、意外とたくさんあります。
そして、その人が異動したり、退職したりすると、それまで当たり前に行われていた仕事ができなくなってしまう。
場合によっては、その仕事そのものが消えてしまうことさえあります。
私自身、色んな部門を渡り歩き、いやというほど経験しました。新しい事業部門に異動し、
「この仕事の責任部門は?」
「〇〇さんがやってたけど、あの人△△部門へ異動したから、△△部門ちゃう?」
みたいな感じ。
さらに、中小企業と関わるようになり、感じるのが、
大企業の場合は人が多いため、一人の異動や退職による影響が見えにくい。
一方で、人の少ない中小企業では、一人の人に仕事が依存していることが、より大きなリスクになっている。
ってこと。
これは「その人が悪い」という話ではありません。
むしろ、その人が優秀だからこそ、仕事を任せることができている。
問題は、個人の能力に頼っていると、組織としての能力として身につかず、会社全体としての能力向上につながらない
ということです。
2.製造現場での改善活動でみてみると……
製造現場の改善活動でみてみると、これがさらに分かりやすくなります。
改善が得意な人がいる職場では、改善がそれなりに進みます。
現場の問題を見つけ、データを集め、原因を考え、改善案を出し、周囲を巻き込んで実行する。
一見、会社として成果が出ているように感じます。
しかし、その人が異動・退職したらどうなるでしょうか。
「次に何を改善すればいいのか分からない」
「データはあるけれど、どう見ればいいのか分からない」
「以前のように改善活動が進まない」
そんなことが普通に起こります。
つまり、改善できる人は育ったけれど、改善できる組織にはなっていなかったということです。
3.必要なのは「改善する人」ではなく「改善する組織」
では、どういう状態を目指せばいいのか。
改善活動は言い換えれば、現場が次のプロセスを回せることになります。
問題発見
→ 原因追究・仮説立案
→ 課題設定
→ PDCAを回す
大切なのは、このプロセスを「できる人」がいることではありません。
組織として、このプロセスを回せること。
現場のメンバー全員が問題意識を持ち、問題が見つかれば個人ではなく組織のメンバーで原因を考え、取り組む課題を決め、実行。その結果を全員で確認して次につなげていく。
これにより、改善する力が個人ではなく、組織に蓄積されて継続的な成果を得ることができます。
この「継続的な成果」、これが大事です。
4.「自分で考えろ」だけでは、現場は自ら考えない
「やり方は現場で考えといて、よろしく」
経営者や管理者からこんな言い方ではないにしろ、これと同じ意味のことを言われることがあります。
経営者は製造現場だけでなく、たくさん仕事があります。
営業活動や、資金繰り、会社存続に直結する仕事です。
製造現場が苦手な人もいますので、工場長が現場責任者に任せてしまいがちです。
しかし「自分で考えろ」と言われても、そない簡単にはいきません。
・何を問題として判断するの?(何が正常で何が異常かわからないと「問題」と判断できません)
・どこまで自分で判断していいの?
・どのデータで何を判断するの?
・考えたことを周囲と話し合えるのか。
・やってみた結果を振り返る機会はあるのか。
このような判断材料や機会なしに現場に「考えろ」と言っても、それは無理。
結果としてなにも動けず、日常作業だけ頑張ることになります。
「考えろ」と言うことと、「考えられる現場をつくる」ことは違う。
ここが、組織能力を高めるうえで重要なポイントです。
5.どうすれば「組織として現場改善できるのか」
では、具体的に何をすればいいのか。
経営者自ら現場と会話し、改善の状況を見て、一緒にレビューしていかないと現場は動きません。
「何を改善しようとしているのか」
「なぜ、それを課題として捉えたのか」
「どんな結果を目指しているのか」
「実行した結果、何が分かったのか」
「次に何をするのか」
を現場と一緒に考える。
その会話の中で、正常・異常の基準、判断権限、使うデータに対する認識を一致させていきます。
実行して、結果を確認し、レビューする。 PDCAですね。
このサイクルを繰り返すことで、少しずつ組織の改善能力が高まっていきます。
ちなみに、このレビュー、経営者は現場と毎日する必要はありません。週30分時間を決めてするのが継続しやすいと考えています。
6.改善の成果だけでなく、「改善する力」を組織に残す
改善活動では、「不良率が○%下がった」「生産性が○%上がった」という成果が注目されます。
もちろん、それは大切です。
でも、本当に会社に残したいものは、それだけではありません。
その現場で考え、話し合い、振り返るプロセスです。
そのプロセスを活かして、また次の改善につなげる。
つまり、
「改善の結果」ではなく、「改善する力」を会社に残す。
これが、個人の能力を組織の能力に変えていくということではないでしょうか。
7.「改善する人」から「改善する組織」へ
中小企業診断士として企業を支援していく中で、単に「この問題を解決しましょう」と提案して終わるのではなく、
経営と現場をつなぎ、現場と一緒に考え、一緒に動きながら、企業自身が改善し続けられる組織をつくる。
そんな支援をしていきたいと思っています。
誰か一人が頑張ることで会社が動く。
それを否定するわけではありません。
でも、その先にあるのは、
「個人に依存するのではなく、組織として動ける会社」の実現です。
「改善する人」を育てる。
そこからもう一歩進んで、
「改善する組織」をつくる。
これからの中小企業支援で、私自身が取り組んでいきたいテーマの一つです。


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