前回、「データを活かして現場を改善する」土台がなければ、AIをいくら使っても機能しないという話を書きました。
今回は、【考える現場づくり】第3弾として、その土台があることを前提に、「AIとどう付き合うか」を考えてみます。
前回記事です。
https://www.kevin-dynamite.com/data-genba-kaizen/
https://www.kevin-dynamite.com/ai-data-katsuyo/
データをAIに渡して「考察して」もらう
現場の不良や稼働率のデータを定期的にAIに渡して「これ、考察して」と指示する。
データを活かして現場を改善することを考えている職場では、ありがちなことだと思います。
理由としては、
・次のアクションを早く打つため
・AI導入のメリットを得たいため
が考えられます。
早くて便利ですし、もっともらしい原因と対策が数秒で返ってきます。
でも、これには二つの意味で危険があると思っています。
危険その1:AIは現場を知らない
一つ目は、AIが実際の現場を知らない、ということです。
AIが返してくる考察は、たしかにもっともらしいです。
でも、それはあくまで一般論としての「もっともらしさ」です。
その工程の設備の癖、その日のシフト構成、直前に起きた小さなトラブル、担当者同士の関係性——こうした現場の文脈を、AIは知りません。
データという断面だけを見て、それらしい理屈を組み立てているに過ぎないのです。
むしろ、現場の複雑な事情を知らないからこそ、迷いのない、もっともらしい答えを返しやすいという面もあります(これはAIの得意技でもあります)。
もっともらしい答えほど、そのまま受け入れてしまいやすい。
実はここが一番怖いところだと思います。
現場を知らないなりの理屈が、現場を知っている人の判断より先に、もっともらしい顔をして出てきてしまうということです。
危険その2:考える力が鍛えられない
二つ目は、答えを先に渡されてしまうと、考えるという工程そのものが省略されることです。
何回AIに考察させても、その人自身の考える力は一切鍛えられません。
この二つは、別の問題です。
一つ目は「AIの答えの精度」の話、二つ目は「人の成長」の話。
丸投げは、この両方を同時に損なうリスクがあります。
AIの役割を明確にする
AIを導入し、データと連携して活用する時は、「AIの役割は何か」をメンバー全員で共有する必要があります。
上述のように、データを渡してもっともらしい答えを出してもらうだけでは、「AIの答えの精度」「人の成長」に関する大きなリスクがあります。
だから私は、AIに考察を任せるのではなく、自分たちの考察をAIに検証してもらう使い方が重要だと考えています。
たとえば、各階層の現場担当者・責任者がデータを見て「作業Aのところの不良が多い」「設備Bのちょこ停が多い」
⇒「これは●●が原因ではないか」と考察したとします。
ここで、二つ考える必要があります。
一つは、問題は「作業Aの不良」「設備Bのちょこ停」の二つだけか?見落としはないのか?
もう一つは、「これは●●が原因ではないか」という仮説は正しいのか?
ということです。
人間がすることには、どうしても見落としがあり、不十分な考察が発生し、後で気づくことも普通にあります。
そこで、AIとの「壁打ち」が重要になってきます。
壁打ち効果
AIを壁打ち相手にしてデータと連携させるメリットは、人間一人では気付きにくい視点を得られることだと思います。
例えば、前日の工程不良のデータを見せて
「何が問題か見つけて、その原因を考察して」
でなく
「私は〇〇が問題で、原因は〇〇と考えている。他に考えられる問題・原因の仮説はありますか?」
もしくは
「この仮説での論理が飛躍しているところはありますか?」
と会話することです。
一人で考えていると気づきにくい自分の仮説の穴を、対話のなかで見つけてもらえます。
特にAIは一般的なことをよく知っているため、予断なく客観的なアウトプットを出してくれますので、「データを見る際、この視点が抜けていたか」と気づかせてくれます。
また、壁打ちを心掛けることにより、先に述べた「AIは現場を知らない」「考える力が鍛えられない」危険性も小さくなります。
対話の中心はあくまで自分たちの仮説です。
だからAIが現場を知らないまま出す結論を、そのまま受け入れてしまう場面も減ります。
注意すべき点
ただ、注意すべき点もあります。
人に相談するのは、多少なりとも手間がかかります。
相手の時間を取る、聞き方を考える、恥ずかしさを乗り越える。この手間があるからこそ、相談する前に「もう少し自分で考えてみよう」という一段階が入ります。
AIには、その手間がほぼありません。
いつでも、何回でも、気兼ねなく聞けます。
便利さの裏返しとして、「自分で考える前に聞く」という癖がつきやすい、ということでもあります。
壁打ち相手として使っているつもりが、いつの間にか丸投げに戻ってしまう。
これが一番陥りやすい落とし穴だと思います。
次回への橋渡し
AIとデータを連携する時は、丸投げにしない、まず自分の考察をしっかり行う。
その考察にヌケモレがないか、別の視点から見る必要がないかを確認するために、壁打ち相手として使う。
AI連携時の考え方・使い方に関する話はここまでです。
ただ、「そう心がけます」というだけでは、現場では機能しません。
人は楽な方に流れます。
次回は、この壁打ちという発想を、実際の現場でどう仕組みに落とし込むか、具体的な工夫をいくつか紹介したいと思います。



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