【”考える現場”づくり(1)】データを見ても動かない現場、動いても本質に届かない現場

ものづくりの現場力強化

雑誌MONOistで下記の記事を見ました。

[データは取れるがつながらない ものづくり白書に見る製造業DXの課題:ものづくり白書2026を読み解くMONOist](https://monoist.itmedia.co.jp/mn/articles/2606/12/news066_2.html)
この記事を読んで、DX/AI導入の前に、現場でデータを読み解く力の醸成について考えてみました。
【考える現場づくり】シリーズとして何本か記事を書きたいと思います。
今回は1本目「データを見ても動かない現場、動いても本質に届かない現場」についてです。

製造現場の改善に関わる人の参考になればと思います。

現場でのデータ活用の実際

定期的な会議で製造に関するデータの報告は一般的で、不良率のグラフも、稼働率の推移も、ちゃんと資料として並んでいます。
担当者もひととおり説明します。「目標達成です」「この工程で発生が多いです」。
一見、考察しているように見えます。

ただ、よく聞いてみると、それは「データを見て言葉にしているだけ」で、そこから先の議論につながらない。
良いのか悪いのか、誰も判断しない。データは机の上に並んでいるだけ。
わたしはこのデータが「見られているだけ」の状態をいろんな現場で見てきました。

一方で、別の現場ではちゃんと対策まで進みます。

「原因はこれです」「対策はこうします」と報告も上がってくる。
ところがよく聞くと、対策は目の前の事象を片付けているだけで、同じような問題が形を変えて何度も出てくる。

この二つの現場、
・データをみても動けない現場
・動いても本質に届かない現場

今回はこの2つのレベルについて、現場で見てきたことを整理してみます。

レベル0:まずは「動ける現場」にする

データが見られているだけで終わる現場には、大きく3つの原因があると感じています。

知識不足

何を見ればいいのか、どんな切り口でデータを読めばいいのかを、そもそも教わっていない。
これは責める話ではなく、単純に教育の機会がなかっただけのことが多いです。

正常・異常を判断する基準がない

これは知識不足とは少し違います。
知識があっても、「このバラツキは普通の範囲か、それとも異常か」という物差しそのものが現場に存在しなければ、データを前にしても判断のしようがありません。
管理限界が不明、日単位の生産計画がなく、決まっているのは生産順だけ、といった状態です。
基準がないので「改善すべきか判断しない」、「月次生産額が到達できたのでOK」で終わります。

機会不足

これには2つの形があります。

一つ目は、見える化そのものが目的化。

生産管理ボードを作った、データを集める仕組みを整えた。
ところがそのデータが「動くために必要な形」になっていない。
数字は並んでいるけれど、どこを見れば異常に気づけるのか、次に何をすればいいのかに繋がらないデータは、結局誰も見なくなります。
見える化はゴールではなく、動くための手段のはずなのに、手段が目的にすり替わってしまう。

二つ目は、上司が現場と一緒にデータをレビューしていないケースです。
対策は現場任せにして、上司は結果の数値だけを見ている。
これは私が一番根深いと感じている問題です

考察力というのは、一人で机に向かって育つものではなく、「なぜこうなったと思う?」「他に見るべきところはないか?」という日々のやり取りの中で鍛えられるものです。

海外の拠点で若手と接していたときも、生産性を測る指標の計算式は知っていてもその見方を教わっていない人が多く、驚いた記憶があります。
知らないのではなく、教わる機会が一度もなかっただけです。
ここを整えるだけで、動く現場に変わることは十分あります。

レベル1:動いても本質に届かない現場

厄介なのは、ここから先です。
動いてはいるけれど、対策が事象処理で終わってしまう現場を、私はいくつも見てきました。
典型的なパターンを3つ挙げます。

事例1(人):新人を配置したら不良が発生。

原因は「新人が正しい作業をできなかったから」。
対策は「新人の再教育」。
これで一件落着。
でも本質的に考えるべきは、新人が入っても不良が出ないような作業・工程・教育の設計にすることのはず。
再教育を繰り返すたびに、次の新人でも同じことが起きます。

事例2(設備):稼働率が下がった。

原因は設備トラブル。
対策は「修理」。
これも間違いではないのですが、トラブルの発生自体を抑える活動には話が広がりません。
壊れたら直す、を繰り返しているだけです。

事例3(段取り):稼働率低下の要因を分析すると、段取り替えの時間が大半を占めている。

ところが「段取り替えが多いのは当たり前」として、そもそも改善の対象として認識されず、放置。

これが一番根深いパターンだと思います。

本質に届くための4つの問い

3つの事例に共通しているのは、目の前で起きた事象への対処で終わっていて、「なぜその事象が起きる構造になっているのか」まで遡って考えていないことです。
では、本質に届くためには何を意識すればいいのか。
私は次の4つの問いを持てるかどうかだと考えています。

  1. 俯瞰的に見る:自工程だけでなく、前後工程・他工程・関係部門・取引先まで視野を広げて見ているか
  2. 傾向を見る:単発の事象として処理せず、時系列やロット単位での繰り返し・パターンを見ているか
  3. そのアクションは再発を防げるか:目の前の1件を片付けるだけでなく、同じ原因で次が起きない設計になっているか
  4. 構造・仕組みまで踏み込めているか:「気をつける」「教育する」という個人の努力に頼る対策で終わらず、仕組み・標準・工程設計側を変える発想に至っているか

3つ目と4つ目は似ているように思われるかもしれませんが違いがあります。
事例1の「再教育」で、本人は「再発防止のつもり」で対策していますが、一時的に「処置」をしただけで本質的な対策にはなっていません(私はこれを「傷口に絆創膏を張っただけ」と呼んでいます)
「再発を防げるか」だけを問うことで、このような「処置」だけの対策を防げます。

だからこそ、仕組みまで踏み込めているかを別の問いとして持っておく必要があります。

また、事例3の段取り替えを「当たり前」として素通りしてしまうのは、傾向を見る視点も、構造まで踏み込む視点も、どちらも欠けているからだと思います。

なぜなぜ分析のような手法を導入している現場も多いですが、手法を使っても、この4つの問いを持たずに進めれば、表面的な原因の言い換えで終わってしまいます。
「新人が作業を間違えた、なぜか、教育不足だったから」で止まってしまえば、それは分析ではなく事象の説明に過ぎません。

おわりに

多くの現場で見える化を進めるものの、データを活かせていない状況を見てきました。
段取り替えを当たり前としない、新人の再教育で一件落着としないのも、そもそもデータを活かして動く土台ができて初めて見えてくる話です。

まず「自分の職場はデータを見て、判断し、動けているかどうか?」
ここを問い直すことが最初の一歩です。自分の職場を確認してみてください。

次回は、この現状がものづくり白書2026のデータにどう表れているかを見ていきます。

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